【レポート】「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクト事業者交流会

2023年1月27日(金)、オンラインにて「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクト事業者交流会を開催。今回は、各プロジェクトの進捗状況や課題、参加事業者間でのフリーディスカッションの様子などについて報告します
「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクト事業者交流会開催
事業者交流会の目的
交流会の目的は、現在進行している7プロジェクトの進捗状況を各事業者が発表し、互いの情報を共有することで、相互理解と横の連携を深め、新たなビジネス展開やモチベーションの向上につなげることです。なお、最終報告会は3月に開催を予定。
「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」の概要をおさらい
「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」は、富山県が成長戦略として掲げる県民のウェルビーイング(真の幸せ)の向上や、「幸せ(関係)人口1000万」の実現等を図るため、地域課題をデジタルソリューションで解決する事例を創出し、本県におけるビジネスモデルの構築につなげることを目指す実証実験プロジェクトです。https://digitalsolutiontoyama.jp/
プロジェクト全体としてのステータス確認(目標とするゴールと現在の立ち位置)
参加した7事業者の皆さんは、サービスについてのより具体的な取り組み内容や課題を共有して、他プロジェクトへの理解を深めるとともに刺激を受けた様子。
採択された7つの事業者によるプロジェクト進捗紹介
【1】株式会社IKETEL(大阪府)
プロジェクト名:「地域内外連携プラットフォームRaction」
実証実験の概要:オンラインプラットフォーム「Raction」を通じて、富山県をはじめとした地方や他地域で事業展開を目指す事業者と、ローカルのキープレイヤーをダイレクトにつなぎ、地域内外の事業連携を支援。関係人口、交流人口を増やし、地域経済の活性化を目指す。
1/27時点のステータス(取り組み状況などを紹介):2023年1月25日、「Raction」のβ版サービスサイト( https://raction.jp/ )をリリース。現在は、自治体、地域コーディネーター(キープレイヤー)ともに一定数の登録が完了し、利用促進のフェーズにある。近々、東京のSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)などでお試し利用会を開催予定。
【2】株式会社キッチハイク(東京都)
プロジェクト名:「地域系サービスの官民連携アグリケーションプラットフォーム構築」
実証実験の概要:新たにアグリゲーションWebサイトを立ち上げ、「保育園留学」や地域情報提供等のサービスを通じて、富山県の関係人口を増やし、地方創生へとつなげる。
1/27時点のステータス(取り組み状況などを紹介):保育園留学については、関係各所との調整およびプランの作成が完了し、2月3日のWebサイトリリースへ向けて準備中。アグリゲーションプラットフォームについてもテーマ・コンセプトが決定し、2月3日にサービスをリリース予定。提携事業者との連携を図っていく。(アグリゲーションWebサイト「富山こどもみらい部屋」https://kodomomirai-room.com/は2月3日にリリースされました!)
【3】NTTコミュニケーションズ株式会社(東京都) 
プロジェクト名:「ベビーテックを活用した育児負担の軽減および余暇時間の創出」
実証実験の概要:ベビーテック(子育てを支援するアプリやITデバイス等)の活用により、女性をはじめとする富山県内の子育て世代が抱える家事・育児の課題解決を目指す。
1/27時点のステータス(取り組み状況などを紹介):ベビーテック体験会を3カ所で開催し、2022年12月までに計42名が参加。また企業向けのオンラインセミナーも開催しており、2023年1月25日までに計27名が参加した。現在、40名以上の子育て世代の方が、無償で貸し出されたベビーテックをお試し中。
【4】株式会社ネクトプラス(富山市)
プロジェクト名:企業デジタル化・DX推進高度デジタル人材マッチング
実証実験の概要:富山県出身のデジタル人材と県内企業をつなぐマッチングサイトのリリース、および外部人材の活用ノウハウや事例の普及により、県内の中小企業が抱えるIT課題を解決。
1/27時点のステータス(取り組み状況などを紹介):企業および副業人材の募集は概ね完了し、デジタルプラットフォーム(マッチングサイト)もローンチ済み。1月28日にオンラインでの交流会、2月4日に東京でオフラインでの交流会を開催。3月4日にもオフライン交流会を予定しており、マッチング事例創出を目指す。
【5】株式会社IoTRY(射水市)
プロジェクト名:中小製造業におけるデジタルツインを用いたデータ活用人材の育成
実証実験の概要:デジタルツイン技術により工場の作業環境を仮想空間に再現し、作業工程のシミュレーション等によって業務改善を図る。
1/27時点のステータス(取り組み状況などを紹介):富山県内の協力企業の各種設備にセンサーを設置し、VR開発では工場(建物)・機械・作業者の再現まで完了。取得データを用いた可視化作業等は2月13日から実施する予定で、実証実験開始に向けて最終調整を進めている。
【6】能越ケーブルネット株式会社(氷見市)
プロジェクト名:お困りごと解決プラットフォーム
実証実験の概要:おもに中山間地域に住む高齢者とギグワーカーをつなぐプラットフォームを開発し、高齢者が抱える生活上のお困りごとを解決・支援する。
1/27時点のステータス(取り組み状況などを紹介):プラットフォームは完成しており、電話やメール等での受付体制も整えて、現在はサービスを利用する高齢者等とギグワーカーの登録促進のための広報活動を展開中。事業LPサイト「氷見キトキトサポートプロジェクト」https://www.himi-kitokito.com/
【7】株式会社TRUSTDOCK(東京都)
プロジェクト名:デジタル身分証を用いた県民向けアプリ等の連携
実証実験の概要:「eKYC(オンライン本人確認)」を利用した「デジタル身分証」により、パスワードレス認証や個人データの連携を実現し、利便性を向上させる。
1/27時点のステータス(取り組み状況などを紹介):アプリ連携の方針変更により、現在、「デジタル身分証」を活用した「食べトクとやまアプリ」とキャンペーンサイトの間での個人データ等の連携に向けて調整中。
採択された7つの事業者間でのフリーディスカッション
ディスカッションの目的
事業者間の横のつながり強化を目的として、事業を進めていくうえでの悩みの共有や意見交換が活発に行われました。
フリーディスカッション
(CASE 1)本人確認の技術とメタバースの親和性
――TRUSTDOCK:官民連携にあたり、一般の人が絡む事業では安全や安心感の提供が課題に。本人確認についての意見や感想などを伺いたい。
――IoTRY:デジタルツインでは、外部の人が工場の中に入って指導や作業することを最終的なゴールとしている。ただ、VRでは設計書などの機密情報も見えてしまうため、セキュリティをどう担保するかが課題。本人確認の技術とメタバースの親和性は?
――TRUSTDOCK:人がリアルの世界とバーチャルの世界を行き来するにあたって、同一性の担保が求められている。実際に、ライトに使える本人確認の手段はないかと相談を受けることも。工場でもeKYCやデジタル身分証は相性がいいと思う。
(CASE 2)高齢者や子育て世代の悩みを地域連携で解決
――能越ケーブルネット:今回は高齢者の悩み解決にフォーカスしているが、初めて子どもが生まれて子育てに悩んでいる方もいると思う。NTTコミュニケーションズさんのベビーテックと連携して、今後事業展開できないか?
――NTTコミュニケーションズ:困りごと解決プラットフォームは、我々の事業と親和性が高いと感じている。ベビーテックは、あくまで子育ての選択肢を増やす取り組みのひとつであり、同様にベビーシッターを雇うことを検討している方へのサービスも考えられる。今後も意見交換を続けていきたい。
(CASE 3)デジタルツインの強みと今後の展望
――IKETEL:デジタルツインについて、工場内のVRの映像はゴーグルなどをつけて見ることができるのか?
――IoTRY:メタワーク仮想空間の中は、外からログインすることで見られるようになる。カメラで撮った映像よりも精度高く細部まで見られるのが特長だが、一番の長所はシミュレーションが可能なこと。工場では機械のレイアウトひとつで生産性や稼働率が変わるため、何千万円もする機械を設置する前にシミュレーションできるのは大きなメリットに。
――IKETEL:富山県は製造業が多いので相性がよさそう。小さな工場では、機械の配置などトータル的な運用コーディネートがなければ改善効果が得られなさそうだと感じたが、コンサルティングのようなことをしていく予定は?
――IoTRY:今後サービスを広げてくための策として、コンサルティング会社が入っている工場に対し「コンサル用ツールとして導入できないか」と提案中ではあるが、工場や地域によって進め方や特性が異なるため、そのあたりの分析を先に実施したいと思う。
(CASE 4)副業人材と雇用者が抱える障壁
――ネクトプラス:デジタルマッチングに取り組んでいるが、そもそも皆さんの会社は副業がOKかどうか、ご自身は副業をしたことがあるか、どんなハードル(障壁)があるかなど、企業側からの観点でも副業人材としての意見でもいいので、参考までに教えてほしい。
――TRUSTDOCK:副業人材の視点で話すと、仕事を受ける前に面接等で確認はするものの、いざ始まってみると時間が足りないなど事前情報と異なることが一定数起こる。気軽にちょっとだけ副業しようというスタンスの場合、ギャップを感じやすいことも。
事業者目線でいうと、副業人材の実績・スキルが確かなものかを確認する手段がないため、「エビデンスを客観的に証明できる仕組みがないか」と自治体や企業から相談を受けることが増えている。今後、実績や資格情報なども証明できる仕組みを、デジタル領域で実現できないかと思案中。
――事務局:副業人材が自分のスキルを活かして仕事をする場合、在籍中の企業で培った技術や情報などの流出が心配されるが、ネクトプラスさんは副業人材に対してどう対応しているのか。
――ネクトプラス:個人的な知見と会社の営業秘密の境目を判断するのは難しい。契約時には、「情報漏洩にあたらないのはオープンな情報のみで、その企業でしか知り得ない情報を話すのはNGである」と注意喚起している。また、半年に1回ほどのペースで定期的に契約の結び直しをおこない、抵触の恐れがある場合は契約自体を見直すなどクオリティーをコントロールしている。
(CASE 5)コミュニティ運営のための取り組み
――NTTコミュニケーションズ:今回のプロジェクトではコミュニティやマッチング事業が多いが、我々の育児関連事業でも、ママ同士のコミュニティが大切だと感じている。皆さんがコミュニティに人を集めるために取り組んでいる工夫について伺いたい。
――IKETEL:Ractionはサービスリリースしたばかりで、継続的なユーザー獲得のための施策はこれから。最初は身近な人たちに使ってもらうことを想定しているが、プレスリリースやWebサイトリリースなどの広報活動や、お試し利用会のようなイベント開催も考えている。また自社で運用しているSlackコミュニティを活用して、情報発信やイベント・交流会開催なども検討中。
――キッチハイク:アグリケーションプラットフォームもCtoCのサービスで、多種多様な課題が発生するため、コミュニティ運営の難しさを感じている。新規獲得については、キラーコンテンツを作ることが大事だと捉えており、現在は東京在住で地方での子育てを希望している方をターゲットにした「保育園留学」をキラーコンテンツに。継続については、ターゲットに対して適した情報を適したタイミングで渡すことでユーザーの囲い込みを図り、利用促進につなげようと考えている。
――事務局:独自にキラーコンテンツを作ることも大事だが、横のつながりをうまく活用して、何社かが連携してキラーコンテンツを作るのもいい。
(CASE 6)官民連携の成功の秘訣
――キッチハイク:「保育園留学」をキラーコンテンツに、官民連携で関係人口創出を目指しているが、自治体ごとに熱量が異なることが悩み。
――富山県・デジタル化推進室:自治体や部署によって多少の温度差はある。たとえば、ワーケーションには積極的でも、保育や福祉関係では安全性が重視されるためなかなか踏み出せないという事情も。とはいえ、横断的に政策を進めていく役割を担う部署として、意見を伺いながら調整していきたい。
――事務局:自治体では2~3年任期で担当者のローテーションがあり、せっかくスムーズに進んでいても新しい担当者になって1からやり直しということが起こりうる。自治体とのつなぎ役・調整役を担う地域の民間企業・団体が加わり、継続的にサポートしてもらえるような関係性を作ることがストレートな解決法かもしれない。
参加いただいた事業者のみなさま、ありがとうございました。
2022年11月より始動した「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクトは、いよいよ実証実験の段階に突入。富山県の熱い想いを託された7事業者の取り組みは、2023年3月に開催される成果報告会に向けて、ますます本格化していきます。次回は、各プロジェクトの実証実験の結果報告(速報)についてご報告します。