【2022年度】【株式会社IKETEL】 「ITの力」✕「人の力」で地域を越えた事業連携を支援 社会課題を解決に導くビジネスのカタチ
少子高齢化や働き手不足、IT化/DX化の遅れといった様々な地域課題は、自治体消滅にも繋がりかねない大きな社会問題の一つです。その問題を解決するべく、「人の力」×「ITの力」で地域を越えた事業連携を支援し、地域・社会の活性化に取り組む、株式会社IKETEL(以下、IKETEL)。オンラインプラットフォーム「Raction」を通して、見えてきた課題やIKETELが目指している「ウェルビーイングな世界」について、IKETEL代表の松本栄祐さんにお話を伺いました。
地域経済の活性化と関係人口創出を目的としたプラットフォームサービスを作りたい
友人が富山出身だったこともあり、以前から富山県のことは大好きで何度も足を運んでいました。昨年、とある企画に参加したことがきっかけで、「富山県アンバサダー」をさせて頂いていたご縁もあり、「いつか富山県で面白いことができればと思っていました。そんな中、今回の「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)実証実験プロジェクト」のことをお世話になった県庁職員の方に教えていただき応募させていただくことに。
我々が開発に取り組んでいるのは、地域経済の活性化と関係人口創出を目的として、地域を越えた事業連携を支援するプラットフォームです。そこで今回の実証実験では、実際に富山県と県外事業者との連携事業の創出を目指すことに加え、動向データの取得と、「どのようなマッチングが上手くいっているか?」「外部人材・企業のニーズはどこにあるのか?」「どういう地域が選ばれていて、選ばれていない地域との差は何なのか?」といった情報を定量的に分析し、その連携の仕組み化・最適化に取り組んでいます。そして、その情報を地域側に還元し、地域の取り組みや行政施策の改善に役立てることで、より質の高い事業連携が生まれるサイクルを回していきたいと考えています。
開発メンバーと広報メンバーを組織し一丸となって迎えた実証実験
実証実験に参加できることが決定し、そこからサービスの開発メンバーと広報メンバーを組織して臨みました。着工開始してから最初の約2か月は、β版の開発に費やしています。現状、まだまだ改善するべき点は多く、追加機能の開発を含め、サービスとして実用化させるにはアップデートを重ねていく必要があると感じています。
開発と同時に、実際にサービスをリリースするにあたって多くの人に知っていただき、登録していただく必要があったので、広報活動にも注力しました。現在では、自治体の方、地域コーディネータの方、一般ユーザーの方などを含めた全ユーザーで総勢200名近くの方に登録いただいています。多くの方に参加いただくことで、よりリアルな検証結果を得ることができるのではないかと思っています。
人の温度を感じながら繋っていく地域イベントへの参加や名刺交換の場を大切に
リリース直前まで、富山県下の自治体だけに発生するエラーに悩まされました。結果的には、ローカル設定の問題ということがわかり、すぐに解決できたので安心しています。今後、実際にサービスを稼働していく中で出てきた不具合への迅速な対応や、ユーザー数を増やしながらトラクションをつくっていくことが重要になってくると思います。
我々が提供するのはオンラインのサービスです。オンラインを通じて周知していくことはもちろん大切なのですが、より良いサービスを作り上げていくためには人の力が欠かせず、オンラインだけでは足りない部分があると感じています。実際、地域のイベントに参加して、名刺交換をしながらお話をさせていただく中で理解を深めていただくことも多かったので、今後はそういった現地での繋がりをこれまで以上に大切にしていきたいと考えています。
「働くこと」、「生活すること」に選択肢が増え誰もが自由に選べる優しい世界を創りたい
我々が実証実験に参加した目的は、地域経済の活性化と関係人口創出のため。これを実現するためには、正直、やることは山積みです。しかし、今回参画させていただいた富山県での実証実験を一つの成功モデルとして、日本全国、そして、将来的には海外にも目を向け、事業連携や支援できるプラットフォームになるよう成長させたい。そのためにも、サービスの改善と拡大に日々取り組んでいきたいと思います。
世界から見ると日本は大きくありません。しかし、美しい景色や後世に遺したい場所がたくさんあります。その場所をどう守っていくか。もちろん、観光で人を呼び寄せるのもその一つだとは思いますが、それだけでなく「仕事」が一つのキーワードになると私は考えています。観光資源に乏しく、縁もゆかりもない土地だとしても、そこに仕事があれば繋がりをつくることはできます。そして、そこにはITの力だけでなく、人の力も重要だと感じています。アイディア発信の場やビジネス発展が首都圏や大都市だけに集中するのでなく、あらゆる地方から生まれたら、日本全体が活性化し、社会問題の解決にも一歩近づくのではないでしょうか。
我々が考える「ウェルビーイングな世界」とは、働くこと、生活することの選択肢が増え、それを自由に選べる世界。「Raction」というサービスを通して、地域を越えた事業連携だけでなく、共創の支援によりウェルビーイングに繋がる仕事やイノベーションを生み出していきたいです。
【地域とユーザー属性のマッチング】地域内外連携プラットフォーム「Raction」を使った試験運用の体験会
2月14日、SHIBUYA QWSにて地域内外連携プラットフォーム「Raction」の試験運用を体験できるイベントが開催されました。オフラインで実施されたイベント会場には地域との連携や共創に興味のある方が多数参加。
イベント冒頭で、IKETELの代表松本氏より実証実験の背景や目的などが語られました。
――松本氏
地域課題といえば、少子高齢化、働き手不足などが挙げられ、このままのペースで進めば20年以内には約半数以上の自治体が消滅すると言われています。もはやこれは地域課題という枠に留まらず、社会問題といっても過言ではありません。
これらの課題を解決するには地域の中の人だけでなく、外の人たちと積極的に繋がっていくことが必要です。そして、共創することで地域を活性化させ、社会問題を解決する糸口が見つかると考えています。そこで、我々は地域のローカルプレーヤーと呼ばれる方々とWebの仕組みを活用して、地域を超えた事業連携を効率化させ、仕組み化をする実証実験を行っています。
地域側の悩みとして挙げられる
●関係人口を増やしたい
●地域課題を解決したい
●地域を活性化させたい
これらは、地域側だけでシェアしても解決できないケースが多々あります。その一方で、地方に関心を持たれている事業者さんが一定数存在しているものの、事業展開するためには大きく3つの壁があると考えています。
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■情報
地域で事業活動を行おうとする際には、他の地域と比較するような広い情報と、その地域の人しか知らないような深い情報が必要になってくるが、ネット上だけではなかなかキャッチできない
■マッチング
地域の人とのファーストコンタクトやマッチングまでに壁がある。現状は人伝てでの紹介やコネクションに依存しており、不確実性も高い
■関係性構築
ある程度は仕方ないが、地域との関係性構築や継続にも時間と労力がかる
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その際に、地域との繋ぎ役となるような人や伴走的な支援があると地域での活動のしやすさが大きく変わるのではないか?と考え、地域内外の連携を支援するオンラインプラットフォーム「Raction」が誕生。今回のイベントでは、来場いただいた皆さまに実際に「Raction」を使用していただき、このプラットフォームの中で、どんな情報が載っているのか?どんな人とどんなコミュニケーションが取れるのか?などを体験していただき、使用感などをヒアリングしたい」と、松本氏は語りました。
「Raction」でできること
外部連携に前向きな全国の自治体の情報を集約しているので、会員登録していただくことで地域にいるコーディネーターの方たちと直接繋がれる(オンライン相談や現地アテンド、支援依頼などの相談が可能に)
「Raction」への登録
会員登録画面から進み、受信可能なアドレスとPASSを入力。「一般ユーザーとして使用する」を選択し、次へ。必須項目を記入して、規約に同意すると登録が完了。
サービスのコンセプトとして「地域との連携」が関わってくるので、「地方への関心理由」や登録者の「スキル(どんなことができるのか)」などの記入が必須となっている。
本サービスは完全審査制になっているので、登録申請後は、Raction側で「承認」が押下されるような仕組み。
実際の登録ページを参加者に見ていただきながら、地域の課題や強み、どんな事業者さんを求めているかなどを紹介していきます。
<参加者より挙げられた質問>
Q:使用するにあたって手数料はかかるのか?
A:マッチングや会員登録にかかる手数料は不要です。チャットボットも無料でご利用いただけます。支援依頼につきましてはサービスの内容やプロジェクトの規模によって契約料のかかる人とかからない人がいるので詳細をご確認ください。
Q:料金はどのような手順で支払うのか?
A:「支援依頼をする」というボタンを押下すると、頼みたい内容別に金額が表示。現在は口座振込になっているが、今後はクレジット決済機能も拡張させていく予定。
Q:株式会社IKETELの利益は?
A:マッチングが成功して、例えば「1時間5,000円の現地アテンド」をご依頼した場合、一部が手数料としてプラットフォーム側に落ちるようなモデルになっていて、現在のβ版だと15%が落ちる仕組み。今後、プラットフォーム上にはユーザーデータが溜まってくるので、そのデータを元に解析を行い、ニーズを考察し、ご提案する形でも利益化に繋げていきたい。
Q:アテンドは、実際に自治体の中に潜り込めるような部分までサポートいただけるのか、観光案内程度をイメージしているのか?
A:ビジネスシーンを想定している。コーディネータさんの属性として自治体の職員の方もいれば民間の方もいるので、どなたにご依頼するかによって異なる。必ずしもエンドユーザーが行政の方とは限らないので、まずは、チャットボットなどで要望をお知らせいただき、その後、詳しく話を聞きたいなどであれば個別相談などを選択することをおすすめします。
Q:登録している方たちと、メッセンジャーなどで繋がることも可能。IKETELさんを介するメリットは何か?
A:地域コーディネータのSNS情報が見られるのは、その方がどのような人なのか、普段何を考え、何を発信しているのかを知って、コンタクトを取る際の判断材料にしていただくためです。規約では、本サービス上で知り合ったユーザーさん同士が直接支援依頼をすることは禁止しています。地域コーディネータさんもシステム上で取引きする方が、未払いのリスクを回避でき、安心な取引きができるため、そもそもRactionを通さないと支援依頼が断られるのではないかと考えています。
Q:地域の名前を見ても、知らない土地なのでどこにある町なのかイメージできない。地図があるといいのでは?
A:直感でわかるような地図は検討したい。
<松本氏から参加者の皆さまへの質問>
■事業領域観点において、地域と連携するならどんなことができたら嬉しいか?
- 高齢者社会の中で、高齢者に対する商品のレコメンドを地域と連携しながらやっていきたい
- 地方の方がどんな悩みを抱えているのかなどをヒアリングさせていただきたいので、そこの部分でアテンドしてほしい
■体験会を通して思った率直な感想は?
- タグだけだと中身まで見えてこないので、自治体の課題が一覧化されているページがあると探しや すいし、そこから自治体に繋がれる仕様になるとさらにスムーズ
- 手軽に地域と繋がれそうなので、好印象
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参加者の皆さまがどんなことに興味を持っているのかなどをリアルタイムで聞きながら、実際のページにアクセスし、体験していただいた本イベント。
現状、β版の「Raction」はプロジェクトや事業にフォーカスしたtoB寄りのサービスとして、どんなニーズがあるかなど検証を繰り返し、アップデートを行う予定です。