富山県の社会課題をデジタルで解決 地域ビジネス成功のヒントに出会うイベント「Digi-PoC TOYAMA – ウェルビーイングな世界を切り拓く -」を開催しました!
東京・渋谷駅の真上にあり、スタートアップ企業が集まる「渋谷QWS(キューズ)」を会場に、2023年6月30日(金)、富山県主催のイベント「Digi-PoC TOYAMA -ウェルビーイングな世界を切り拓く」が、リアルとオンラインのハイブリッド形式で開催されました。
「Digi-PoC TOYAMA」とは富山県民のウェルビーイング向上を図るため、先進的なデジタル技術を活用して地域課題を解決する実証実験プロジェクト。2022年から始動し、数々の成果を残したプロジェクトが、2023年度にも引き続き、実施されます。
今回のイベントは「富山県のDX化推進を後押ししたい」「デジタル技術を活用して地域課題に取り組みたい」と考える全国の企業に向けて、地域ビジネス成功のヒントや「Digi-PoC TOYAMA」参加の情報を届けるものです。
この記事では、イベントの内容を詳しくレポートします。
新しい未来へのチャレンジを、富山県が全面的にサポート
オープンニングは、富山県の新田八朗知事と会場をリアルタイムで繋ぎオンラインメッセージ。
「2022年2月に新しい富山を作っていくための成長戦略を策定しました。その柱に掲げたのが『ウェルビーイングの向上』です。人口減少の進むなか、富山県が様々な社会課題を解決し、県民のウェルビーイングを高めていくにはデジタルの力が不可欠です。この実証実験プロジェクト『Digi-PoC TOYAMA』では、県内の企業や大学等との連携をはじめ、富山県が皆さんのチャレンジを全面的にバックアップします。富山県と一体となり、ワクワクする新しい未来を共に作っていきましょう」
はつらつとした笑顔で、今回の実証実験プロジェクトへの想いが語られました。
続いて、富山県知事政策局デジタル戦略課の長岡課長からプロジェクトの説明です。
募集しているテーマ
- 観光地の利便性向上
- 公共交通の満足度向上
- 中山間地域における生活の利便性向上
- 企業の脱炭素経営推進
- 製造業のデジタル化・DX推進
- 建設業のデジタル化・DX推進
- 教育の充実
- 自治体業務の効率化・働き方改革推進
採用された場合は、富山県と委託契約を結び、実証実験にかかる費用を500万円(他県での例がない取り組みの場合は1000万円)を県が交付します。 募集期間は7月13日まで。2024年2月には実証実験を完了し、3月には成果報告会を開催いたします。
トークディスカッション
社会課題の解決に向けた、デジタル活用の可能性
続いて富山県にゆかりのある2名のゲストを招き、社会課題解決に向けたデジタル活用の可能性やあるべき姿、昨年『Digi-PoC TOYAMA』に参加してみての魅力や課題について、トークディスカッションが行われました。
ゲスト 畠山 洋平 氏
株式会社博報堂 MD コンサルティング局 局長代理(兼)
富山県朝日町 次世代パブリックマネジメント アドバイザー
朝日町と連携して、マイカー乗り合い公共交通サービス「ノッカル」、おたがいさま共教育サービス「みんまなび」などを開発。朝日町と東京都の2拠点生活で感じた生活者発想で、朝日町の課題解決のための取り組みを展開している
ゲスト 加藤 哲朗 氏
株式会社IoTRY(アイオートライ) 代表取締役社長
富山県立大学 大学院修士課程2年在学中
2022年度「Digi-PoC TOYAMA」の採択企業に(テーマ「企業のデジタル化・DX推進」)。事業内容は「中小製造業におけるデジタルツインを用いたデータ活用人材の育成」
モデレーター 岩本 健嗣 氏
富山県立大学 工学部情報システム工学科 教授
富山県 デジタル化推進特命ディレクター
ゴールが見えているものではなく、よりチャレンジングな提案を
トークディスカッションを始める前に、モデレーターの岩本教授から実証実験の内容について補足がありました。
岩本教授
「大切なのは、これが実証実験であるということです。県の委託事業ということで、ゴールが見えているようなものを提案しなければならないと思い込んでいる人もいるかもしれませんが、これは、あくまでも『実証実験』。チャレンジングなもの、『うまくいけば、こんな難しい課題を解決できる』といったものを提案していただきたいし、県のデジタル化推進の役目を持つ立場としても、そういう提案を応援したいです。
採択企業には500万円もしくは1000万円という費用だけではなく、県庁側の担当がついて、ローカルなステークホルダーとの連携をはじめ、様々なサポートをします。また、富山県はいろいろな意味で平均的な県であると思っています。富山県で通用することは他の地域でも通用することが多いので、ぜひ横展開でビジネスの領域を広げてほしいと考えています。」
大切なのは持続性。継続的に使ってもらうために「アナログ」と「コスト」に目を向けることも重要
トークディスカッションがスタートしました。
岩本教授
「まず畠山さんにお伺いしたいのですが、地域課題の解決におけるデジタルの可能性について、どのようにお考えですか?」
畠山氏
「何よりも大切なのは持続性だと思います。デジタルの力を活かすにしても、地域で持続した取り組みを行うためにはアナログのことを忘れてはいけません。使ってもらえなければ意味がないんです。朝日町での事業は、町の文化である『お互いさま』の気持ちから着想を得たものです。ノッカル*を利用する際に、バスのチケットを使えるようにしたり、電話で予約ができるようにしたりしたのも、デジタルになじみのない人が利用しやすくするためです。またコスト面も事業の持続性という意味で大切な要素。自家用車やバスのチケットなど、あるものを利用しながらデジタルを使うという姿勢で取り組んでいます。」
▼ノッカルの詳細はこちら
ノッカルあさひまち/朝日町ホームページ
岩本教授
「技術がいいからといって、使ってもらえるわけではありません。このあたりも考慮して、提案をしてもらえればと思います。」
デジタルには生活を豊かにする力があることを、上手に伝える
岩本教授
「加藤さんは昨年度、高岡市の工場を舞台に実証実験を行いましたが、現場のみなさんからの受け入れられ方はどうでしたか?」
加藤氏
「デジタルツインは技術的に高度なものです。簡単に受け入れてもらうのは難しいかと思い、現場に入ってしっかりとコミュニケーションをとることを大切にしました。」
▼株式会社IoTRY昨年度の実証実験はこちら
中小製造業におけるデジタルツインを用いたデータ活用人材の育成事業
岩本教授
「センサなどで作業を『見える化』しようとすると、作業者さんにとっては『サボっているのを見つけようとしている』と考えがちに。デジタル=ネガティブにとられえられてしまうケースも多いのではないでしょうか。」
加藤氏
「はい。そのため、昨年度の実証実験では、作業者さんの優れている動きを再現して『もしそれをしていなかったらどうなるか』というポジの行動をデジタルツインでシミュレーションしました。すると『デジタルは褒められるツールなんだ』という雰囲気になり、そこから実証実験がとても盛り上がったんです。使い方によって受け取られ方が違うということを実感しました。」
岩本教授
「朝日町でも受け入れてもらうための工夫などはしていましたか?」
畠山氏
「地域で一番力を持つのは、やはり『クチコミ』。発信力のあるデジタルに強いおじいちゃん、おばあちゃんを見つけて、協力を仰ぎました。その人の生活が便利で豊かになれば、あとはクチコミでどんどん広がっていきます。」
岩本教授
「そういうキーになる人物を見つけるのも簡単ではないので、この実証実験では富山県がしっかりサポートします。」
富山の地域課題に取り組む畠山氏、加藤氏の話は、実に学びの多いもので、実証実験参加へのヒントが詰まったディスカッションとなりました。
ディスカッション終了後は質疑応答へ。ゲストの畠山氏、加藤氏、モデレーターの岩本教授は、会場にいる参加者からの質問に時間が許す限り答えていました。その一部を紹介します。
※左から、岩本健嗣氏、加藤哲朗氏、畠山洋平氏
Q:スタートアップを経て、現在は金融系の企業で新規事業の担当をしています。金融業界には法律など様々な制約があるのですが、畠山さんの活動を拝見すると「とても自由」な印象を受けました。そのあたりのお話を聞かせてください。
A:畠山氏
それほど「自由」ではなく(笑)。社のビジョンのもとやっています。朝日町と霞ヶ関を行ったり来たりするなかで、国という事業者の目線と生活者目線の違いを日々感じています。ただやみくもにやっていても形にすることはできないので、僕たちが提供できる「生活者発想とクリエイティビティ」という価値で、朝日町を良くしようと取り組む日々です。ぜひ、あなたの得意分野である「金融」を活かして、この実証実験にチャレンジしてほしいと思います。
募集テーマごとに、県の担当者と参加者が質疑・意見交換
閉会の挨拶に登壇した富山県知事政策局 川津局長からは、「富山県には課題がたくさんあります。富山県で何かビジネスをしたいという人はもちろん、トークディスカッションのゲストである畠山さんや加藤さんと一緒に仕事をしてみたいなど、型にとらわれない、幅広いご提案をお待ちしています」と結びの言葉がありました。
イベント終了後には、それぞれの募集テーマを担当する富山県の職員と質疑・意見交換の場が設けられました。
富山県が抱えている課題について深く掘り下げようと質問する人や、市民の困りごとについて生の声を聞きたいと質問する人、自分のアイデアを担当者に投げかける人もいました。なかには、昨年の採択企業であるIoTRYの加藤社長に「Digi-PoC TOYAMA」に参加した経験を尋ねる人も。
終了時間を過ぎても、熱いやりとりが続いていました。
まとめ
富山県が目指すウェルビーイングな地域づくりや、デジタルを活かした社会課題へのアプローチなど、地域ビジネスの実践的なヒントにふれられる充実したイベントとなりました。
富山県のDX化推進に貢献したい、地域の課題をビジネスチャンスにしたい、富山へのビジネス進出や拠点づくりのヒントが知りたい、といった意欲的な事業者の皆さん。実証実験プログラム「Digi-PoC TOYAMA」への参加をぜひお持ちしています!
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