【2023年度】「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクト 事業者交流会
2024年1月26日(金)、「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクトの事業者交流会がオンラインにて開催。今回は、採択された9つの事業者による各プロジェクトの内容と進捗状況の報告、参加事業者間でのフリーディスカッションの様子などについて報告します。
事業者交流会の目的
交流会の目的は、現在進行している9プロジェクトの進捗状況を各事業者が発表し、互いの情報を共有することで、相互理解と横の連携を深め、新たなビジネス展開やモチベーションの向上につなげることです。なお、最終報告会は3月に開催を予定。
「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」の概要をおさらい
「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」とは、富山県が成長戦略として掲げる県民のウェルビーイング(真の幸せ)の向上や、「幸せ(関係)人口1000万」の実現等を図るため、地域課題をデジタルソリューションで解決する事例を創出し、本県におけるビジネスモデルの構築につなげることを目指す実証実験プロジェクトです。https://digi-poc-toyama.jp/
採択された9つの事業者によるプロジェクト進捗紹介
【1】株式会社センサーズ・アンド・ワークス(兵庫県)
実証実験テーマ:観光地の利便性向上
プロジェクト名:観光地におけるスムーズな駐車誘導システム構築
実証実験の概要:
観光地周辺の駐車場誘導業務にデジタルツールを導入。誘導業務の負担軽減と同時に、駐車場利用者の利便性を向上する。
富山県を代表する観光地「立山黒部アルペンルート」の出発点である立山駅周辺には、駐車場が点在。しかし、道路の分岐点や駐車場に配置された誘導員に頼っていているため、利便性は欠如している。解決のため、駐車状態を把握するべくカメラや案内板を設置、駐車管理ツールとWEBサイトを開発。2023年10月~11月に実証実験を行い、その効果を確認している。
実証実験の詳細についてはこちら
https://digi-poc-toyama.jp/topics/sensorsandworks/
【2】株式会社トラフィックブレイン(東京都)
実証実験テーマ:公共交通の満足度向上
プロジェクト名:バスロケーションデータの解析による最適なバスダイヤ作成
実証実験の概要:
バスロケーションシステムの走行実績データに基づき、遅延が少ないダイヤを自動生成する、路線バスの自動ダイヤ改正支援システム「DiaBrain」を使用。富山県内を走るバスの遅延を改善する。
実証実験は、県内の大手2社のバスの中でも、遅延の大きい系統に対して実施。ヒアリングを繰り返し、会社ごとの事情も踏まえて計算方法を調整する。
【3】e-dash株式会社(東京都)
実証実験テーマ:企業の脱炭素経営推進
プロジェクト名:中小企業のCO2排出量の可視化・削減
実証実験の概要:
富山県の中小企業15社が光熱費関連の請求書をスキャンし、クラウドシステムへアップロードすることにより、自社のCO2排出量を可視化。排出実態を踏まえ、各社に削減方法を提案する。
一方、県に対しては、各社のCO2排出量結果を閲覧できる「e-dash Partner Portal」を提供。結果を分析した上で、カーボンニュートラル実現に向けた支援施策の立案、さらには企業と県の連携体制についてサポートを行う。
【4】株式会社フォーバル(東京都)
実証実験テーマ:製造業のデジタル化・DX推進
プロジェクト名:中小製造業のDX経営支援
実証実験の概要:
GXやDXの取組み等を可視化するプラットフォームを運用し、推進に関する専門人材である「GDXアドバイザー」がコンサルティングを行うもの。
具体的には、まず経営情報プラットフォーム「富山県広場」を開設し、登録企業がいつでもDX進捗度等がわかるよう、可視化ツールによる診断レポートなどを提供。「GDXアドバイザー」が課題を整理し、その解決のために必要なデジタルツールの選定をアドバイスする。
【5】富士通Japan株式会社(東京都)
実証実験テーマ:製造業のデジタル化・DX推進
プロジェクト名:中小製造業におけるAIソリューション導入による業務効率化
実証実験の概要:
中小製造業3社からそれぞれの自社課題を抽出し、3社の共通課題に対するAIソリューション(画像認識・異常検知、行動分析の組み合わせ)を試作・導入。AIソリューションの基礎教育から体験、要件定義、実装までの一連プロセスをステークホルダーと連携しながらサービスを提供。
【6】スパイダープラス株式会社(東京都)
実証実験テーマ:建設業のデジタル化・DX推進
プロジェクト名:公共施設の点検保守管理業務のデジタル化
実証実験の概要:
公共施設の各種点検業務や不具合管理をデジタル化。そのうえ、報告書作成時間や管理者・作業者間の情報共有コストを削減することにより、技術職員の負荷低減と措置対応速度の改善度合いを検証する。
富山県和田川ダム、富山県国際健康プラザの二つの実証フィールドにおいて、点検業務や不具合管理業務に係る項目・フローを洗い出し、施設維持管理アプリ「S+Maint」をカスタマイズすることによって、維持管理業務の効率化とその達成度合いを把握する検証を行っている。
【7】松嶋建設株式会社(立山町)
実証実験テーマ:建設業のデジタル化・DX推進
プロジェクト名:衛星データの解析による被災箇所の見える化・点検業務の効率化
実証実験の概要:
災害が発生した場合、1日でも早く「当たり前の暮らし」を取り戻す必要がある。そのためには、DXを活用してできるだけ早く全容を把握することが求められる。
衛星画像を使って、被災した場所を自動で検知できるシステムを産学官連携で開発。現在は、富山県立大学の学生と一緒に画像解析作業に取り組んでいる。
【8】三菱総研DCS株式会社(東京都)
実証実験テーマ:教育の充実
プロジェクト名:特別支援教育におけるロボットを活用したソーシャルトレーニング実践
実証実験の概要:
コミュニケーションロボットを使い、特別な支援を必要とする生徒にコミュニケーショントレーニング、ソーシャルトレーニングを行う。
2023年11月から実証実験中。アンケート調査に加え、コミュニケーションの様子を撮影し、感情をAI分析、対話内容の妥当性など、さまざまな効果測定方法を採用する予定。
【9】株式会社インテック(富山市)
実証実験テーマ:自治体業務の効率化・働き方改革推進
プロジェクト名:生成AIとマルチモーダルAI(複数のデータ形式を総合的に処理)を活用した自治体業務の効率化
実証実験の概要:
生成AIとマルチモーダルAIを組み合わせたチャット形式の検索・支援処理を実装。マルチモーダルAIを活用して紙資料のデータ化と検索情報の自動生成をすることで、生成AIによる資料検索の効率化を図る。さらに、特定業務に参考となる情報を回答・提示することで、文書作成業務や書類チェック業務をサポートする。
2024年1月下旬は広報課、2月下旬にはスタートアップ創業支援課にて実証実験を行う予定。
採択された9つの事業者間でのフリーディスカッション
事業者間の横のつながり強化を目的として、事業を進めていくうえでの悩みの共有や意見交換が活発に行われました。
フリーディスカッションでは、それぞれのプロジェクトに対する質問から始まり、様々なテーマについて意見交換が行われました。一部となりますが、内容を紹介します。
(CASE 1)「にぎわい」「地域活性」につながるDX
―――三菱総研DCS株式会社 西岡様
株式会社センサーズ・アンド・ワークス様は、人流センサーをメインに事業展開しているとのことだが、我々もイベント運営会社と組んで、「このイベントは企画通りに喜んでもらえたのか」「計画した通りに人が動いたのか」などを、IoT機器を使って測れるかを研究している。御社の製品などを拝見して参考にしたい。
―――株式会社センサーズ・アンド・ワークス 堀江様
「にぎわいづくりDX」という名前で同様の取り組みを実施している。まずはステークホルダーとイベントを評価する指標を決め、どのようなセンサーで、何を測らなければいけないのかを決め、取得したデータを評価し、次へつなげるという形でPDCAを回している。
富山県内で事業活動をしている松嶋建設様やインテック様は、富山県の「にぎわい」や「地域活性」をどのように見ているのか?
―――松嶋建設株式会社 松嶋様
富山県で最も人が集まるところは3ヶ所。富山駅のほかは、富山市と高岡市にあるショッピングモール。田舎にも目を向けてほしいといろいろやってはいるものの、なかなかうまくいっていないのが現状。情報発信が大切で、どういう情報を、誰に、いつ流すのかが重要だと考える。
―――株式会社インテック 菊様
いつも人が集まるのはその3ヶ所だが、何かイベントがあると人の動きがある。最近ではイベントの発信にLINEなどを使用。いかに人が集まるような仕掛けをしていくかが重要。
―――事務局
松嶋さんがおっしゃったように、どんな情報を誰に届けるかが非常に重要。以前は「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」で、同様な情報を流すマーケティングが多かった。しかし、今は蓄積したデータを踏まえたターゲッティングが必要に。そして施策を打つときには、しっかりPDCAを回すことを考えていかないと、今後は立ちゆかなくなるだろうと感じている。
(CASE 2)高齢者とデジタルデバイスの未来
―――株式会社フォーバル 広幡様
内閣府の地方創生人材支援制度を活用し、今年度11の自治体に当社の人材を出向で派遣。「自治体のDX」と「住民のDX」について取り組んでいる。
以前、誰も取り残さないという観点で、高齢者向けにNTTドコモさんと連携して、スマートフォン教室を運営。しかし、使える人は学ばなくても使えるし、使えない人は、そもそも使う気にならないため、徐々に閑散としてきた。そこで、デジタルデバイスが使えない高齢者を減らすために、ご自宅にタブレット端末を配布。当社のコールセンターのスタッフが、朝7時から8時の間にタブレット端末を起動させてコミュニケーションをとっている。10ヶ月ほど実証実験を続けているが、話し相手がいるということも一助になってか、利用率が向上。これをひとつの入り口にして、行政の「行かない・書かないサービス」をアドオンできれば、移動が難しい高齢者の皆さんにとって大きなメリットになると考える。
先ほど三菱総研DCS様の取組みをうかがっていて、「高齢者とロボット」はどうだろうかと。
―――三菱総研DCS株式会社 西岡様
1人住まいの高齢者をターゲットとしたロボットサービスをセコムさんが展開。ユカイ工学さんが出している小さいロボット「BOCCO」は、起きる時間、服薬など、オペレーターが一人ひとりの生活に合わせて対応してくれる。
「他人だと気を使うが、ロボットだと気を遣わなくてもいい」「面倒な時は無視してもいいから気ラク」という声も上がってきている。ロボットもインターフェイスとして夢ではないと思う。
―――株式会社フォーバル 広幡様
デジタルとアナログのハイブリッドの良さを実感しつつも、将来的にはオペレーターをどれだけ増やせばいいのかという話になると予測。私たちは今、小・中・高校生に「オペレーターになってみませんか」とアプローチをしているところ。孫世代と話すことで高齢者の皆さんは元気になり、子供達にとってもいい学びになると想像している。
参加いただいた事業者のみなさま、ありがとうございました。
2年目を迎えた「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」。
ここからは、先行している一部企業を除き、多くの参画企業が実証実験の最終フェーズに入っていきます。富山県民のウェルビーイング向上を目指したプロジェクトの今後の展開がどうなるのか、採択された9つの事業者の取組みは、2024年3月に開催される成果報告会に向けて、ますます本格化していきます。
次回は、各プロジェクトの実証実験の結果報告(速報)についてご報告します。