実証実験レポート

【実証レポート】通所介護施設の送迎業務を共同運行化し、介護サービスの担い手確保と負担軽減を実現(ダイハツ工業株式会社) 

Digi-PoC TOYAMAにおいて、富山県が抱える地域課題のテーマの一つとして、「介護サービスの担い手確保と負担軽減」実証実験プロジェクトが募集され、ダイハツ工業株式会社が受託、現在実証実験に取り組んでいます。 

今回は、ダイハツ工業株式会社が富山県とともに取り組む「介護サービスの担い手確保と負担軽減」に向けた実証実験についてインタビューを行った内容をお届けします。

◆実証実験の取り組み背景 

 ダイハツ工業株式会社のインタビューに先立ち、富山県が抱える地域課題の一つ、「介護サービスの担い手確保と負担軽減」について、
担当課である富山県射水市介護保険課の武田さんに、本実証実験についての思いやダイハツ工業株式会社の取り組みへの期待について伺いました。


 

令和7年を迎え、団塊の世代が75歳以上となる中、富山県においても今後の高齢化の進展、とりわけ2040年にかけて85歳以上人口の急増が見込まれています。介護需要の拡大に対し、現役世代の減少や職員不足の深刻化が大きな課題です。

県内の介護事業所では、「職員の確保・育成」が最も大きな課題として挙げられており、半数以上が人材不足を実感しています。また、他職種との賃金格差の拡大や過重な業務量も相まって、現場の負担感が高まっています。こうした中で、ICTやAI、ロボティクスなど新たな技術活用を通じて、業務効率化と職員負担の軽減を図ることが喫緊の課題です。

ダイハツ工業株式会社様からご提案いただいた「AI運行管理システムを用いた共同運行による送迎業務の負担軽減と効率化」が実証され、介護施設の送迎業務におけるDX・協働化が進展し、持続可能な介護人材確保モデルとして富山から発信できるようになることを期待しています。


◆今回のインタビュー対象者:ダイハツ工業株式会社について 

ダイハツ工業株式会社は、自動車メーカーとしてのモビリティ技術とノウハウを活かし、地域の介護サービスにおける効率化や運営負担軽減に向けたソリューションの提供に取り組んでいます。 

介護現場の課題解決を目指し、業務効率化や働きやすい環境づくりに貢献しています。今回の「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)実証実験プロジェクト」で、富山県の介護サービスの担い手確保と負担軽減に向けてどのような挑戦をしているか、ダイハツ工業株式会社の小林氏にお話を伺いました。 

◆Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクトについて 

―――今回「Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクト」に応募された経緯を教えてください。 

 小林氏:「Digi-PoC TOYAMA」は今回初めて知りましたが、テーマである「介護サービスの担い手確保と負担軽減」に弊社のソリューションが貢献できると考え、エントリーを決めました。自治体が課題を提示し、企業が応える仕組みに魅力を感じます。 

―――貴社の取り組みが富山県の課題解決にマッチしていると感じられたのですね。では、介護サービスの担い手確保と負担軽減の現状・課題について、貴社はどのように認識されていますか? 

小林氏:介護サービスの担い手確保が非常に難しい状況は、富山県に限らず全国共通の課題だと認識しています。介護現場の業務負担も非常に大きく、効率化や負担軽減の取り組みが求められています。弊社は、AI運行管理システムの活用などを通じて、送迎業務の効率化や運営負担の軽減を支援していきたいと考えています。  

◆実証実験内容:複数施設の共同運行を実現する運行管理システム「らくぴた送迎」について 

―――今回「介護サービスの担い手確保と負担軽減」をテーマに、通所介護施設の送迎業務を共同運行化する実証実験を実施されていますが、その経緯を教えてください。 

小林氏:通所介護施設の送迎業務は、施設ごとに人員や車両を確保する必要があり、運営コストが高くなる傾向にあります。また、担い手不足も深刻です。そこで、複数の施設が送迎業務を共同で行うことで、人員・車両・コストの削減と効率化を図れないかと考えました。 

―――具体的な共同運行の仕組みや取り組み内容について教えてください。  

小林氏:複数の通所介護施設が、送迎ルートや時間帯を共有し、共同で車両と人員を運用します。利用者の送迎スケジュールを統合することで、重複する移動を削減し、効率的な運行を実現します。 

小林氏:こうした共同運行を支える仕組みとして、運行管理システム「らくぴた送迎」を活用しています。施設ごとの送迎希望や利用者情報を一元管理でき、AIが自動で最適なルートとスケジュールを提案します。車両の位置や運行状況もリアルタイムで確認できるため、急な予定変更にも柔軟に対応できます。また、紙や電話で行っていた調整作業をデジタル化することで、職員の業務負担を大幅に軽減することが期待できます。 

◆実証実験の成果について 

―――実証実験の成果や、今後の展開について教えてください。 

小林氏:今回の実証実験では、射水市内で複数のデイサービスを運営する社会福祉法人小杉福祉会にご協力いただき、同法人が運営する2つのデイサービスの送迎を実際に共同化し、どのような効果が得られるかを検証しました。その結果、共同運行によって人員や車両の効率化が進み、運行コストの削減が確認できました。また、運行管理システムの導入により運行の透明性が高まり、介護スタッフの負担軽減にもつながることが確認できました。 

◆利用者の声 

―――実証実験に参加された施設や関係者から寄せられた声はありますか? 

小林氏:はじめての共同運行ということもあり、当初は「本当にうまくいくのか」と不安の声も多くありました。ただ、将来的な人材不足は現場でも強く意識されており、業務の効率化に向けた取り組みの必要性は皆さん共通して感じておられました。実際にシステムを介して運行計画を一緒に立てていく中で、「このルートなら一緒に回ったほうが効率的だね」といった意見が現場から自然に出てくるようになり、共同運行の手応えが見えてきました。 

実際に運行を始めてみると、まだ細かい調整が必要な場面もありますが、「送迎がスムーズになった」「負担が軽くなった」といった職員の声も多く聞かれています。段階的に課題を整理しながら、より良い体制づくりに向けて検討を重ねているところです。 

◆今後の展望と協力体制 

小林氏:今後は、今回の実証で得られた成果や課題を踏まえながら、共同運行の仕組みを富山県内の他の地域や事業所にも広げていきたいと考えています。単に効率化を図るだけでなく、地域全体で人材や車両を共有し合える体制を整えることで、介護サービスを安定して提供できる環境づくりを目指しています。また、自治体や関係機関とも連携を深めながら、現場の声を反映した運用ルールの整備や、導入サポートの仕組みづくりにも取り組んでいきたいと思っています。 

◆最後に 

小林氏:今回の実証を通じて、共同運行が現場の負担軽減や業務の効率化につながる手応えを実感しました。施設同士が協力し合うことで、新しい送迎の形を少しずつ築いていけるという前向きな気づきもありました。これからも現場の声を大切にしながら、地域全体で支え合える介護サービスのあり方を探っていきたいと思います。