実証実験レポート

【実証レポート】「米どころ富山」の持続可能な未来をデジタルで繋ぐ。農地マッチングの“仲人”が挑む、農地DXの最前線とは。 (サグリ株式会社)

「Digi-PoC TOYAMA」において、富山県が抱える地域課題のテーマの一つとして、「持続可能な農業の確立」に向けた実証実験プロジェクトが募集され、サグリ株式会社が受託、現在実証実験に取り組んでいます。 今回は、サグリ株式会社が「ニナタバ」を活用して挑む「持続可能な農業の確立」に向けた実証実験についてインタビューを行った内容をお届けします。  

富山県農業経営課(中村氏、池田氏)コメント 

 富山県は、農業従事者の高齢化が全国に比べて早く進行し、今後も農業経営体数が減少する見込みです。農地情報をデジタル地図化した上で、今後担い手が不在となりそうな農地に、地域内外の農業法人や企業の参入を期待しています。 

取り組みの背景と課題認識

◆今回の実証で活用された、農地マッチングサービス「ニナタバ」とは 

実証実験の核となる「ニナタバ」は、衛星データとAI、独自の区画技術を掛け合わせ農地のあらゆる情報をデジタル地図で可視化する農地マッチングプラットフォームです。 最大の特徴は、人工衛星から得られたデータをサグリのAIが解析し、農地の「耕作放棄地率(耕作放棄地である可能性)」を把握できる点にあります。これに自治体が持つ農地台帳や意向調査のデータを統合することで、「農地の現況や特性、担い手の属性やご意向」を可視化します。 

次いで自治体とニナタバを見ながら、どの地域に農地を集約・集積するか、担い手を呼び込むかを決めます。 

一方で、経営規模拡大等を目指す農業法人に対してもメリットがあります。通常、参入判断に直結する道路幅、傾斜量、地域の意向などの情報は役所の様々な部署に確認する必要がありますが、これらをデジタル地図で一括で見える化し、これまで属人的に行われてきた農地仲介のデジタル化を実現しています。 

Q: 今回の実証実験に応募した経緯を教えてください。  

益田氏: 以前から「ニナタバ」には、各地の農業委員会が持つ「あの土地ならあの人が合う」という属人的なマッチングノウハウをデジタル化できるという確信がありました。他県での先行事例では、すでに耕作放棄地が目立つ中山間地域を対象に、比較的自治体としても危機感が高い現場でのマッチング促進を行ってきました。そこでは、衛星データで「荒れた土地」を見つけ、戦略的に担い手を探していくというアプローチを取りました。  

一方、富山県は全国有数の米どころです。「なぜ富山で担い手確保が課題なのか?」と、正直最初は半信半疑な部分もありました。しかし、Digi-PoC TOYAMAの説明会において、実際に原課の皆様のお話を聞いてみると、富山県においても担い手の高齢化が加速度的に進んでいることを認識しました。 

富山のような大規模な農地を擁する地域だからこそ、担い手の皆様が離農した際の地域へのインパクトは計り知れません。今こそ、デジタルを活用した「攻め」の担い手確保策が必要だと感じ、この挑戦の場を選びました。 

サグリ株式会社 取締役 益田 周 様 

 実証実験内容

Q:今回の実証のKPIについて教えてください。 

益田氏 本実証では、期間も限られているため、まずは具体的な農地マッチングの成約ではなく、下記の3点をKPIとして設定して実証を行ってきました。後ほどお伝えしますが、今のところ、順調にKPIをクリアすることができています。 

  1. 「各自治体における重点地区の設定」 
  2. 「ヒアリング10法人以上」 
  3. 「ヒアリング結果を示唆としてまとめ、自治体職員への満足度アンケートの実施」

Q.実証プロセスについて教えてください。

◆ステップ1:自治体連携と地図化の戦略的アプローチ
 本実証では、自治体の協力を得る方法として、状況に応じた2つのアプローチを検証しました。 

    1. 自治体を巻き込む方法: 自治体と直接対話し、提供を受けた具体的なデータをシステムへ反映し、詳細な地図化を進めました。 
    2. 初期に自治体をあえて巻き込まない方法: 実証初期において、オープンデータを活用することで迅速に地図化を進め、より機動的にプロジェクトを開始しました。 

    ◆ステップ2:重点地区の抽出と可視化
     オープンデータを活用して地図の準備を行い、そこから「農地として求められる条件が整っている」農地もしくは、「地域として積極的にマッチングを行っていきたいと考えている」農地を重点地区として抽出しました。 具体的には、耕作放棄地率、農地形状、担い手の有無、年齢層、後継者情報などの多角的な指標をレイヤーで可視化し、農業法人が経営効率の観点から興味を持つ可能性が高いエリアを特定しました。 

    ◆ステップ3:多種多様な法人へのアプローチ・ヒアリング
     抽出した重点地区に対し、以下のプロセスで担い手候補へのヒアリングを試みました。 

      1. 情報発信: 農業法人顧客リスト約2000者や「ニナタバ」登録者約200者に対し、メルマガやプッシュアプローチを実施しました。 
      2. 直接対話: 関心を示した法人等に対し、サグリが一次対応を行い、具体的なニーズ(栽培作物、必要インフラ等)をヒアリングしました。 
      3. 商談の深化: 具体的案件については自治体や県、地区関係者を交えた商談へと繋げ、現地視察などの二次・三次商談へとフェーズを進めています。 

        ◆ステップ4:ヒアリング結果の集約・各自治体への展開
         農業法人等へのヒアリング結果を資料化し、自治体に展開することで、実際の農地への反応や、意向情報などをフィードバックします。 

        実証実験の成果と手応え

        Q: 現在の成果と、法人の反応について教えてください。 

        益田氏: 最大の成果は、デジタルな入り口から、実際に農業法人を「紹介することができた」ことです。約1900者へアプローチし、10者以上への濃密なヒアリングを実施しました。様々な示唆を得て、自治体の皆様へも共有をさせていただきました。示唆の1例としては、富山県の農地に興味を持つ農業法人は「将来の拡大可能性」を見ていることがわかってきました。「今は1ヘクタールだが、周辺を巻き込んで10ヘクタールまで広げられるか」という視点です。 我々のツールは、単一の土地だけでなく、周辺の道路幅や水利、地権者の意向を一括で可視化できるため、彼らの経営判断を強力に後押しできました。この点はある程度、広域(3自治体)で実施している強みが出たとも言えます。すでに具体的に農業法人が参入に強い関心を示し、具体的な検討フェーズに入っています。 

         今後の展望とメッセージ

        Q: 自治体からはどのようなフィードバックがありましたか? 

        益田氏: 黒部市の担当者様から「窓口に相談に来た企業に、この画面を見せながらお話をしてみたい」という非常に前向きな声をいただきました。 今までは窓口に来ていただいても、中々限られた時間内で具体的な農地を案内することにハードルがありましたが、デジタル地図を介することで、行政サービスの透明性と信頼性が格段に向上するかと思います。 

        Q: 今後の「持続可能な農業の確立」に向けた抱負をお願いします。 

        益田氏: 富山は農地基盤整備が全国の中でも進んだ「超優良物件」の宝庫だと考えています。しかし、地元の関係者と農業法人との直接のやり取りでは「しがらみ」が壁になることもあります。我々民間が、デジタルツールを武器に「しがらみのない仲人」として介入することで、県外からの新しい風を吹き込みたいと考えています。まずは、本実証で進めた土地の見える化や、ヒアリングなどの結果を活かして、実際のマッチング事例を創出することにより、デジタルを用いたマッチングの有効性を示していければと考えております。 

         運営情報

        • 運営業務受託者: Relic・北陸銀行共同企業体 
        • 実証協力: 富山市、魚津市、黒部市