実証実験レポート

【実証レポート】「介護サービスの担い手確保と負担軽減」実証事業について(株式会社タイミー)

◆実証事業概要 

本実証プロジェクトは、富山県が推進する「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」の一環として、株式会社タイミーの提案が採択されたものです。 本プロジェクトでは「介護サービスの担い手確保と負担軽減」をテーマに、従来の求人サイトや派遣とは異なるスポットワークサービス「タイミー」を活用します。ワーカーの「働きたい時間」と事業者の「働いてほしい時間」を柔軟にマッチングさせることで、介護事業所の人手不足解消と、業務負担軽減の定着を目指しています。 

実証実験取り組みの背景 

富山県を含む全国の介護業界は、人材不足という深刻かつ構造的な課題に直面しています。 富山県は、団塊の世代が全て75歳以上となる令和7年(2025年)を迎え、令和22年(2040年)には介護需要の高い85歳以上の人口急増が見込まれており、一方で現役世代は急減するなど、人口構造は大きな転換点を迎えています。県民のウェルビーイング向上に向けた新しい社会経済システムの構築は政策の柱となっています。 

本事業の課題提案を行った射水市が、事業前に実施した介護事業者向けアンケート調査では、「介護職員」や「看護職員」が「不足」または「やや不足」と感じている事業所が5割を超えました。現場の課題としては「職員の確保・育成(80.5%)」が最も高く、次いで「業務量が多い(50.4%)」が挙げられており、介護従事者の長時間労働による心身の負担増加も顕在化しています。 

株式会社タイミーについて 

株式会社タイミーは、「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をミッションに掲げています。同社が提供する「タイミー」は、求職者と企業を1日単位で結びつけるスキマバイトサービスであり、面接や履歴書不要で即時のマッチングを可能にします。 登録ワーカー数は1,270万人、導入事業者数は21.5万社を超えており(※1)、スキマバイトサービス利用率No1※2)となっています。。また、介護業界に特化した専門組織を有し、介護福祉分野の有資格者(初任者研修以上)も41.8万人以上登録されています。 地方の人手不足を重要な社会課題と捉え、これまでも自治体や商工会議所と連携した取り組みを推進してきました。

※1202510月時点
※2:調査委託先:マクロミル、調査方法:インターネット調査、調査時期:2025131日〜202524日、調査対象:直近1年以内にスキマバイトを経験したことのある1869歳の男女1033 

◆Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクトの狙い 

本プロジェクトでは、スポットワークの活用により、介護領域における「人材確保」と「現場負担の軽減」の同時実現を図ります。 具体的には、介護資格を持たない未経験者が短時間から「介護助手」として現場に入れる仕組みの構築や、潜在的な労働力および有資格者の掘り起こしを行います。未経験者をはじめ、子育てや家庭の事情、あるいは離職によりフルタイム勤務が難しい「潜在有資格者」に対し、数時間時間でも働けるスポットワークという柔軟な働く機会を提供することで、介護業界への労働参加を促進します。 業務を細分化し、短時間や特定の作業のみを担う人材を確保することは、現場の慢性的な人手不足と負担感の解消に寄与するものと考えます。  

富山県担当者の声 

富山県 射水市 介護保健課 武田様 

令和7年を迎え、団塊の世代が75歳以上となる中、富山県においても今後の高齢化の進展、とりわけ2040年にかけて85歳以上人口の急増が見込まれています。介護需要の拡大に対し、現役世代の減少や職員不足の深刻化が大きな課題です。
県内の介護事業所では、「職員の確保・育成」が最も大きな課題として挙げられており、半数以上が人材不足を実感しています。また、他職種との賃金格差の拡大や過重な業務量も相まって、現場の負担感が高まっています。 

こうした中で、スポットワークの活用を通じて、介護事業所の人手不足を解消し、介護職員の負担の軽減を図ることが喫緊の課題です。 

実証実験プロジェクトでは、 介護事業所と求職者のマッチングを支援するとともに、雇用機会の創出や職場定着につなげ、継続的な雇用への促進につながればと期待しています。 

実証実験の内容 

本プロジェクトでは、介護分野におけるスポットワークの普及・定着に向け、以下の支援策を実施しました。 

  1. 事業者向け説明会の実施 介護事業所向けに活用方法や事例を紹介する説明会を開催しました。 
    • 1回(2025821日・射水市):14事業者が参加 
    • 2回(20251030日・富山市):6事業者が参加
  2. 業務の切り出し支援とマッチング 施設ごとの形態や人員状況に応じ、短時間・未経験者でも対応可能な業務などを切り出し、ワーカーとのマッチングを行いました。
     
  3. 住民向け説明会の実施 
    2025124日に実施した説明会には約20名が参加しました。サービス概要や求人申し込み方法のほか、具体的な介護事業所での求人事例などを紹介しました。 

これまでの実証実験の成果 

令和71219日時点の実績において、登録事業者(17事業所)の総求人数1,271人に対し、稼働数は876人となり、全体の平均マッチング率は68.9%でした。特に、資格を要しない求人(介護助手など)については、求人数666人に対し稼働数569人、85.4%という非常に高いマッチング率を達成しています。資格が不要な人材であれば高い確率で求人を見つけることができるため、未経験者でもできる業務の切り出しにより、正規職員の業務負担を軽減することがスポットワーク活用のポイントと考えられます。 

【インタビュー】実際の現場から:社会福祉法人おおさわの福祉会様 

2回事業者向け説明会では、実際にサービスを活用されている社会福祉法人おおさわの福祉会 古柴様にご登壇いただきました。導入当時の率直な心境や、現場で起きている具体的な変化について、お話いただいた内容を抜粋いたします。 

── 最初に「スポットワーク(タイミー)」の話を聞いた際、どのような印象を持たれましたか? 

古柴様: 正直に言いますと、最初は不安しかありませんでした。私たちの施設は富山市南部という立地で、市街地からも離れています。「こんな田舎に本当にワーカーさんが来るのか?」と半信半疑だったんです。 ところが、実際に募集をかけてみると、そのイメージはガラッと変わりました。募集の翌日にはすぐに3件のマッチングが成立したのです。「あ、これならいけるかもしれない」と、手応えを感じた瞬間でした。 

── 具体的にどのような業務を任せているのでしょうか? 

古柴様: 業務の切り出しは、大きく分けて2つのパターンで行っています。 一つは「資格のない方(介護助手)」向けです。食事の配膳や下膳、食器洗い、テーブル拭きなどが中心ですね。「資格はなくてもできるけれど、手間がかかる周辺業務」をお願いしています。 もう一つは「有資格者」向けです。こちらは、食事介助や口腔ケア、見守りのある状態での移乗介助などをお願いしています。リピーターの方には、少しずつ専門性の高い介助も任せられるようになってきました。 

── 実際に導入してみて、現場の職員や利用者様の反応はいかがですか? 

古柴様: まず驚いたのが、ワーカーさんの仕事の質です。年齢層が若く、業務の飲み込みが非常に早い。特にお風呂掃除などをお願いすると、現場の職員が「ピッカピカになった!」と喜ぶほど丁寧に仕上げてくれます。また、何より大きいのは、職員の「心の余裕」ですね。 スポットワーカーさんがフロアにいて雑務を担ってくれることで、職員はバタバタと走り回ることが減り、空いた時間を利用者様との会話やケアに充てられるようになりました。これが職員自身の「やりがい」を取り戻すことに繋がっています。 また、経営的な視点では、部署長クラスにコスト意識が芽生えたことも収穫でした。利用明細を通して「人を配置するコスト」をリアルに感じることで、効率的な人員配置を自ら考えるようになっています。 

── 逆に、課題に感じている点はありますか? 

古柴様: 課題は「受け入れ時の管理工数」ですね。 現在、5事業所合計で110人前後のワーカーさんを受け入れていますが、その都度「はじめまして」の方がいらっしゃいます。ロッカーへの案内、QRコードでの勤怠処理、鍵の開け閉めなど、一人ひとりへの対応にはどうしても手間がかかります。 また、当日の朝になって急にキャンセルが発生することもあり、その調整や、初めての方へ毎回ゼロから業務を教える負担感は、現場としてまだ課題に残っています。 

【アンケート】利用ワーカーの回答 

事業期間内に勤務したワーカーへの任意のアンケート結果から、意識の変化や動機をまとめました。(回答数27人) 

  1. 介護業界に対するポジティブなイメージの変化
    • スポットワーク(タイミー)を通じて実際に勤務したことで、回答者の約70%19名)が介護業界で働くことのイメージが向上したと回答しています。 
    •  具体的な変化内容: 最も多かった理由は「勤務前に想像していた以上に働きやすいと感じた」(14名)でした。次いで「自分にできる仕事があると感じた」(8名)、「楽しい・面白いと感じた」(7名)といった回答が続いており、心理的なハードルが下がった様子が伺えます。 
  1. 柔軟な働き方の需要と高いリピート意向
    • 今回の事業所で働いたきっかけとして、「希望の時間帯と合致したから」が16名と最多であり、スポットワーク特有の柔軟性が参加の大きな動機となっています。 
    • 継続意向: 特筆すべきは、回答者の約89%24名)が「今回働いた事業所で、またスキマバイトで働きたい」と回答している点です。一度の勤務を通じて、その職場への信頼感や再就職意欲が非常に高く醸成されていることがわかります。 
  1. 多様な層の参加:未経験者と有資格者の混在
    • 回答者の属性は多岐にわたります。 
      • 未経験層: 介護業界の「経験はない」と答えた人は9名おり、その多くが「人生経験を広げたい」や「興味があった」ことをきっかけにエントリーしています。 
      • 専門層: 一方で、「介護福祉士」の資格保有者が10名含まれており、本業として介護職に就いている人が他施設でスポットワークを利用している実態も浮き彫りになりました。これは、有資格者の「副業」や「スキルアップ」の場としても機能していることを示唆しています。 

◆効果と今後の展望

本事業を通じて、介護現場の生産性向上と人材不足の解消・定着の観点から、以下の効果が見込まれます。 

  1. 介護現場における「業務の再定義」による生産性向上本事業では、「無資格者でも可能な周辺業務」を切り出したことで、専門職の心理的・物理的余裕が生まれたことが確認できました。 
    • 「専門業務」と「周辺業務」の分離: 食事の配膳や清掃といった、資格がなくても丁寧に行える業務をスポットワーカーが担うことで、正規職員が「利用者との会話」という介護の本質的なケアに注力できています。
    • マッチング率の高さが示す「入り口」の広さ: 無資格者向けの求人が85.4%という高いマッチング率を記録したことは、介護業界に対する「未経験者の心理的障壁」が、デジタルツールと業務切り出しによって解消可能であることを示唆しています。 
    1. 潜在層の掘り起こし従来の「フルタイム・長期雇用」という枠組みでは捉えきれなかった労働力が、スポットワークという形式で顕在化しています。 
      • 有資格者のニーズの発見: アンケート回答者のうち約37%10名)が介護福祉士であり、特定の施設に縛られず「空き時間にスキルを活かしたい」という有資格者の新たな働き方のニーズを捉えています。 
    1. 導入・運用における管理工数一方で課題として受入れ時の工数があげられており、事業者サポートの必要性も見えてきました。 
      • 受け入れコストの課題(マネジメント工数):多数の受け入れとなると、案内や説明などの「事務的工数」が現場の負担になり得ます。 
      • こちらに関しては受け入れマニュアル作成や、リピーターの確保による教育コストの低減など、受け入れ体制支援などを通し現場の負担軽減を図れるよう支援が必要と認識しています。 

    まとめ

    今回の実証実験では、業務の切り分け、スキマ時間の有効活用を通して、未経験の方が介護現場に入るハードルを下げることによる参入促進や潜在有資格者の掘り起こしができました。一方で課題にあがっていたスポットワーク導入による管理工数を低減できるよう、受け入れマニュアル作成支援やリピーターの確保、長期就業への切り替え支援を行っていきたいと思います。 今後は、この事業内容を県内全域、他県に広げ、介護業界における「ケア関係人口」を増やしていきたいと考えています。