実証実験レポート

【実証レポート】fowaldアプリによる「とやまデジタル県民コミュニティ」の創出・活性化(株式会社NTTデータ) 

日本橋とやま館は、首都圏での関係人口創出の拠点施設として、富山のライフスタイル・歴史文化・食等に関する各種活動を通じて、富山ファン拡大に貢献してきました。 そんなとやま館で生まれている多くの「とやまファン」を「デジタル県民としてコミュニティ化する」プロジェクトが募集され、現在実証実験に株式会社NTTデータが取り組んでいます。 今回は株式会社NTTデータが取り組む「とやまデジタル県民コミュニティ」の実証実験についてインタビューを行った内容をお届けします!  

◆実証実験取り組みの背景 

株式会社NTTデータのインタビューに先立ち、富山県として課題に感じている「とやまデジタル県民コミュニティ」の創出・活性化について、プロジェクトテーマを起案した日本橋とやま館の田﨑館長に、本実証実験についての思いや株式会社NTTデータの取り組みへの期待について伺いました。  

―――今回の実証実験を通して、今後解決していきたい課題やそれに対する期待感をお聞かせください。 

日本橋とやま館 田﨑館長コメント  

日本橋とやま館は、首都圏での関係人口創出の拠点施設として、富山のライフスタイル・歴史文化・食等に関する各種活動を通じて富山ファン(関係人口)拡大に努めてきました。開館から9年間の活動の中で、売上・来館者・会員数・SNSフォロー者数など、一定の成果を獲得してきたと実感している一方で、リアル拠点のみの活動では、拡張性という点で限界を感じていました。 

ただ、近年のテクノロジーの発展により「Society5.0」の社会が到来したことで、その限界をブレイクスルーする可能性が高まってきたと思っています。 

そこで、これまでの9年間の活動基盤(リアルアセット)を活かしたオンラインコミュニティを創出し、「リアルとデジタル両輪」でコミュニティ参加者主体の富山県の盛り上がりや地域課題解決に寄与するプロジェクトを実行する仕組みを創っていきたいと考え、今回、デジポックにエントリーしました。実証実験を通じて、以下の2つの課題の解決につなげたいと考えています。 

【課題①】新たにデジタル領域での拡張性のあるエコシステム形成
【課題②】若い世代への効果的なアプローチとコミュニティづくり 

日本橋とやま館 

◆今回のインタビュー対象者 

今回プロジェクトに取り組む株式会社NTTデータ社会基盤ソリューション事業本部では、社会基盤を支えるITソリューション事業を行っています。 

今回の「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)実証実験プロジェクト」でどのように「とやまデジタル県民コミュニティ」の創出・活性化に取り組んでいるか、株式会社NTTデータの後藤氏と武田氏にお話を伺いました。 

◆ Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクトについて 

―――今回「Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクト」に応募された経緯を教えてください。 

今回応募した理由は、富山県が目指しておられる「持続的な関係人口の創出」というテーマに対して、当社が提供するfowaldの仕組みが貢献できると考えたためです。多くの自治体では、関係人口施策が一過性のイベントやオンラインを中心に展開されており、県外の方が日常の中で関わり続ける仕組みが十分に整っていない状況があります。富山県においても、行動や継続的な関係へと発展させる仕組みが不足している点を課題として認識されていました。 

こうした課題に対し、生活者が日常的に参加できるミッション形式のクエストを提供することで、富山と関わり続けるきっかけを創出できるのではないかと考えています。また、本実証でリアルとデジタルを行き来する新しい関係づくりの可能性も検証できる点にも魅力を感じました。 

こうした背景から、富山県の皆さまとの協働により、関係人口創出の新しいモデルを実証し、将来的にはデジタル県民という概念を育てる仕組みとして発展させていけるのではないかと考え、本プロジェクトに応募しました。 

―――貴社のソリューションが富山県の課題解決にマッチしていると感じられたのですね。では、富山県における関係人口の現状・課題について、貴社はどのように認識されていますか? 

過去に富山県が実施した関係人口調査等を拝見し、イベント参加や訪問などを通じて富山に触れる機会は一定数あるものの、その後の関わりが継続する割合が限られており、行動が連続性を持ちにくいことが課題であると知りました。 

特に県外在住の方にとっては、富山県との関係をどのように日常の中で維持していけばいいのかが分かりにくく、継続的に関わりを深めていく場や機会が見えづらいことが一つのハードルになっていると感じています。これは富山県に限らず、地域との距離がある方に共通する課題でもありますが、富山県のように魅力が多様な地域ほど、その入口と継続の導線が重要になると考えています。 

こうした状況を踏まえると、関係人口を広げていく上では、単発のイベントや訪問機会だけでなく、興味を持った方が日常的に関わりを積み重ね、富山との距離を段階的に縮めていけるような、継続的な関係形成のプロセスをどう設計するかが重要になるのではないかと認識しています。 

 fowald アプリ 

実証実験内容:「とやまデジタル県民コミュニティ」の創出・活性化について 

―――今回貴社が取り組まれている実証実験の内容について教えてください。 

今回の実証では、オンラインとオフラインを組み合わせることで、富山県と県外の方との関わりが一過性で終わらず、日常の中で継続していくような仕組みづくりを目指しました。 

アプリでは、富山の食や伝統工芸、地域の魅力の再発見につながるテーマをクエストとして企画し、とやまファンラボのユーザーにミッション形式で参加していただいています。クエストそのものが目的というよりは、富山に興味を持った方が、日常の中で富山県との接点を積み重ねていけるようにするための継続的な関わりのきっかけとして位置づけています。 

加えて、これらの取り組みを現地イベントや県外でのプロモーションとも連動させ、リアルで生まれた関心をデジタルに引き継ぎ、デジタルでの活動が再び現地体験につながるような、相互補完的な仕組みを構築しようと試みました。オンラインとリアルの両面から富山県への関心が育まれ、結果として関係人口が継続的に形成されていくプロセスを検証しているところです。 

実際のアプリの投稿画面

―――実証実験期間中、関係人口創出の効果をどのように測定・分析するのでしょうか。 

実証期間中の効果測定では、アプリ上での参加人数やアクティブ率、クエストごとの投稿率といった基本的な行動データに加えて、参加者の属性や興味関心、SNSや現地イベントからの流入経路などを組み合わせて分析しています。 

単に参加数を見るだけでなく、どのような方が、どのきっかけで富山に関心を持ち、どの程度継続的に関わってくださっているのかを把握することを重視しています。また、とやまファンラボに参加されたユーザーを対象にアンケート調査も行い、富山に対する関心の変化や、今後の行動意向がどのように高まっているかも評価する予定です。 

◆実証実験の成果について 

―――現在の実証実験の取り組みや成果を教えてください。 

成果として、複数のクエストを実施する中で、どのような企画が参加につながりやすいのか、また参加が伸びにくい企画にはどのような特徴があるのかが見えてきました。富山県らしさを強く打ち出した企画は、関心の高い一部の方にはしっかり届く一方で、参加者が特定の層に偏りやすい傾向があります。一方で、日常的な行動と結びついたテーマや、全国的に受け入れられやすい普遍的なテーマは、より幅広い層の参加を獲得できることが確認できています。   

また、現地イベントについては、デジタル施策だけでは補えない役割を果たしており、対面でのコミュニケーションが参加ハードルを下げる効果があることも明らかになりました。リアルな接点で生まれた関心をデジタルにつなぎ、デジタルでの活動が再びリアルな場への参加を促すという、相互補完的な構造が関係人口創出において重要であると分かりました。 

こうした知見を踏まえ、次年度以降は、富山らしさと参加しやすさのバランスを最適化しながら、幅広い属性の方の参加が得られる企画を設計し、そこから富山独自の魅力に自然に触れていただく導線を整備していきたいと考えています。併せて、継続的に参加してくださるコア層を育成し、ユーザー同士の交流や自発的な発信が生まれやすい環境をアプリ内で整えることで、将来的にはコミュニティが自走する状態に近づけていくことも目指していきたいと思います。  

左:TUBCイベント写真 右:とやま館イベント写真

―――プロジェクト推進において予想される課題や障壁は何ですか?また、それに対する対応策はどのように考えていますか? 

現時点で認識している課題は、外部からの新規流入が十分に確保できていない点です。実証の結果、SNSからの流入が限定的であったことが分かっており、次年度は今回の実証で最も成果を上げた現地イベントとの連動など、より多様な導線づくりを強化する必要があると考えています。当社の過去実績からもオンラインとオフラインが相互に影響し合う構造が大きな効果を生む傾向にあることが分かっているため、富山県でも接点を多様化し、その関心を確実にデジタルへつなぐ仕組みづくりが重要だと認識しています。 

また、fowaldとしての課題は、コミュニティ機能が十分に認知されておらず、継続参加のベースとなる場の活性化に改善の余地がある点です。通知機能の拡充や、参加状況が分かりやすく可視化される仕組みなど、日常的に関わりを積み重ねやすくするUX 改善を進める必要があると思いました。富山県への関心が高いコア層を育成し、自発的な参加や発信が生まれる状態に近づけるためにも、UX改善はアプリとして重要な課題だと考えています。 

これらの改善を図ることで、幅広い層からの新規参加を促しつつ、継続的に活動するユーザー層を着実に育て、最終的にはコミュニティが自発的に動く基盤を整えていくことを目指して行きたいと考えます。  

◆今後の展望と協力体制 

―――実証実験終了後、「とやまファンラボ」をどのように発展させていく予定ですか?長期的なビジョンをお聞かせください。 

実証終了後は、今回見えてきた成果や課題を踏まえながら、とやまファンラボを富山との関わりが自然に積み重なっていく場として継続的に発展させていきたいと考えています。具体的には、参加ハードルの低いクエストテーマ設定を軸に、富山県の魅力へ段階的に触れていただける導線を整え、幅広い方に継続的に参加していただけるコミュニティ基盤を強化していきます。 

最終的には、とやまファンラボが、県外在住の方も含めて富山県に関心を持つ皆さまが主体的に関わりを育てていくデジタル県民のようなモデルへと発展し、富山県との継続的なつながりを支える仕組みとして定着していくことを目指したいと思います。 

◆最後に 

―――株式会社NTTデータの取り組みは、富山県の「関係人口」の創出と繋がりの深化に向けて、大きな一歩を踏み出しています。デジタルツール「fowald」のこれからの成果にますます期待が高まりますね!  最後に、本実証実験プロジェクトに対するメッセージや、今後取り組んでいきたいことについてお聞かせください。 

今回の実証では、当社としても学ぶ点が多く、取り組むべき課題がまだまだ残っていることも改めて認識することができました。一方で、オンラインとリアルを組み合わせた取り組みを通じて、富山県との関わりをどのように継続していくか、その可能性が少しずつ見えてきたとも感じています。 

今回の実証で得られた示唆や反省点を踏まえ、次のステップでは、より実効性の高い形に磨き込み、参加される方々にとって関わりを続けやすい仕組みを整えていけるよう努めてまいります。 

引き続き、富山県の魅力が国内外に広がっていくよう、皆さまとともに取り組んでまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。