実証実験レポート

【実証レポート】「河川モニタリングの最適化と情報発信」実証実験が本格始動 (株式会社ハイドロ総合技術研究所)

―ハイブリッドAI 縦断水位予測システムと画像式流量観測により、安全で正確な流量計測の手法を実証するとともに、河川管理者の早期対応判断への利用可否を検討する― 

実証実験取り組みの背景 

株式会社ハイドロ総合技術研究所のインタビューに先立ち、富山県が抱える地域課題の一つ、「河川モニタリングの最適化と情報発信」について、担当課である富山県土木部河川課・井澤氏と稲荷氏に、本実証実験についての思いや株式会社ハイドロ総合技術研究所の取り組みへの期待について伺いました。 

富山県土木部河川課 井澤氏・稲荷氏コメント 

富山県が管理する河川には現在、108台の河川監視カメラが設置され、県民に映像が公開されています。これにより、洪水時の水位確認や避難判断に活用されています。また、71の水位観測所のうち、46箇所で流速を観測し、河川流量を算出しており、このデータは河川計画の策定に使用されています。
課題としては、カメラ増設に対する要望があるものの、維持管理の手間やコストが障害となっています。また、洪水時のデータ収集には危険が伴います。
本実証実験により、溢水・越水時の氾濫危険地点の早期発見、増水時の安全かつ簡便な流速・流量計測が可能となることを期待しています。 

今回のインタビュー対象者:株式会社ハイドロ総合技術研究所について 


大阪府に本社を構える株式会社ハイドロ総合技術研究所は、2000年の創業以来、社会インフラや防災に関わる数値解析と情報システムサービスを提供している企業です。社会から信頼され、社員が誇りに思える企業を目指した開発を進めており、日本国内外の大学や研究機関と連携し、科学技術の分野で革新的なソリューションを提供しています。 
今回の「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)実証実験プロジェクト」に関して、株式会社ハイドロ総合技術研究所の取締役 井口氏にお話を伺いました。  

―今回「Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクト」に応募された経緯を教えてください。 

井口氏:北陸のお取引様とのお話で、Digi-PoC TOYAMAのプロジェクトを教えていただきました。弊社の技術力で富山県の河川課題の解決に貢献できる、ピッタリの課題だと考え、応募を決めました。 

―河川課題に対する認識、これまでの貴社の取り組みを教えてください。 

井口氏:近年、記録的な豪雨による洪水被害が多発しております。高水時に越水・溢水危険箇所を早期把握し避難行動をサポートすることや、洪水災害に対する対策を講じるためにピーク流量を把握することが重要であると考えております。 

高水時の流量観測業務では浮子法と呼ばれる従来の手法が実施されており、大雨の状況下に5名からなる班で橋から浮子を投下し、浮子が流れる速度をストップウォッチで測ることを行っております。 

浮子観測法のイメージ(左)とHydro-STIVのイメージ(右) 

危険な現場に訪問する必要があるという安全性の課題、そして危険のために橋梁へのアクセスが通行禁止になり計測作業が行えないという確実性の課題、その2つへの解決としてカメラ映像による非接触型の流速・流量計測ソリューションを提案しております 

今回ご提案のHydro-STIVは、国土交通省の令和5年 非接触型流速計測法の手引きにも準拠している画像式の手法で、日本全国の流量観測業務の企業様に採用していただき、広く実績があるソリューションとなっております。

実証実験内容について 

―今回貴社が取り組まれている実証実験の内容について教えてください。 

井口氏:管理対象河川における全区画の状況把握の課題について、ハイブリッドAI縦断水位予測システムをご提案いたしました。予測降雨と河川水位・流量の観測情報から、水位計測地点に加え、河川全体の縦断的な予測水位情報を提供するシステムとなります。 

また、ハイブリッドという名称は、水位予測を行う際に従来から使用されている物理モデルとAIモデル、両方を採用していることからきております。AIモデルによる予測だけですと、計算内容がブラックボックスであることや、未学習規模の豪雨では正しく予測できないことが課題として挙げられておりました。そこで、従来の物理モデルも組み込むことで、両モデルの課題を補っております。 

今回の実証実験では、上庄川、白岩川の2河川を対象に、水位予測システムを構築しております。 


ハイブリッドAI縦断水位予測システムの画面イメージ 

高水時の流量観測のデジタル化の課題については、非接触型流速・流量計測ソリューション(Hydro-STIV)をご提案いたしました。カメラ映像から流速・流量を計測することが可能で、高水時に現場作業の必要がなくなるソリューションとなります。 

Hydro-STIVは既に精度が検証され、国内外の流量観測業務で広く採用されているソリューションです。今回の実証実験では、改めて富山県のフィールドで精度検証を行い、有用性を確認することを目的としました。 

 

実証実験の成果について  

―現在の実証実験の気づきや成果を教えてください。 

井口氏:水位予測システムでは、河川課や出先機関の関係者様にシステムをご利用いただき、使用感のアンケートを実施させていただきました。水位予測がグラフで一目でわかることがよかったという回答があった一方、追加機能の実装希望等、多くのご要望をいただきました。河川管理される担当者様にとってわかりやすく使いやすいシステムへ改良するためのヒントを多くいただきました。 

非接触型の流量計測システムでは、既設の監視カメラ映像の利用可否を検討した結果、録画映像のフレームレート不足等、流量計測用に使用することは厳しく、既設カメラシステムの改修が必要と判明しました。そこで、本実証実験では地場業者に採用されやすいように、簡易で安価な撮影システムを設置し、夜間含めた映像を撮影いたしました。  

流観橋へ設置した撮影用機器 

撮影した映像をHydro-STIVで解析した画面 

今後の展望について 

―実証実験終了後、長期的にこの取り組みをどのように発展させていきたいと考えていますか? 

井口氏:水位予測システムでは、利用者からのアンケートが返ってきておりますので、使いやすさや機能拡充など、水防情報のスムーズな把握を促し、避難指示等、利用者の意思決定をサポートしていきたいと思います。 

非接触型の流量計測ソリューションでは、既往の流量計測結果と比較し一定の精度を実証できたため、次年度以降に県内の流量観測業務を行う地場業者様に採用いただけるよう、説明会や本プロジェクトの成果のアピールを行いたいと考えております。 

最後に 

―最後に、本実証実験プロジェクトに対するメッセージや、今後取り組んでいきたいことについてお聞かせください。 

井口氏:富山県庁のご担当者様と課題解決に向けて進めていくことが重要であると考えており、その点について大きなサポートを頂き、有意義なプロジェクトであったと思います。 

また、河川課題をヒアリングしプロジェクトを進める中で、私たちの技術が現場の負担軽減や、水害の被害抑制に貢献できるものであることを、改めて確認することができました。 

今後もサービスのさらなる向上に取り組み、河川課題の解決を通して社会への貢献を続けていきたいと考えております。