【レポート】「寿司といえば、富山」のブランディングをDAOの仕組みで推進(Web3 Times合同会社)

「Digi-PoC TOYAMA」Program01において、「寿司といえば、富山」のブランディングを推進する中で、「魅力的な場所・モノ等への入口となる県内各地の寿司店と観光客をつなげるプロジェクト」が募集され、Web3 Times合同会社が受託、現在実証実験に取り組んでいます。
今回は、Web3 Times社が設立した「寿司といえば富山DAO」の実証実験についてインタビューを行った内容をお届けします‼
■「寿司といえば富山DAO」について
「寿司といえば富山DAO」は「寿司といえば、富山」ブランディングを推進するためのオンラインコミュニティです。コミュニティには県内外を問わず、新しいことにチャレンジしたい人、寿司が好きな人など誰でも参加することができ、コミュニティ参加者同士の共創によって富山の寿司を盛り上げます。
*DAO(自律分散型組織)とは
DAO(自律分散型組織)とは、様々なバックグラウンドを持つ人々が主体となって「自律的」に企画やイベントを推進でき、それぞれの能力を最大限に発揮できる場となります。 また、DAOは「分散型」組織としての特徴も持ち、一部の運営者による意思決定ではなく、全メンバーが対等な立場で、投票などを通じて組織の意思決定に関わります。
■今回のインタビュー対象者:Web3 Times合同会社について
「寿司といえば、富山」ブランディングの取組みの輪を拡げ、関係人口を創出・拡大するため、自律分散型オンラインコミュニティ「寿司といえば富山DAO」を設立し、実証実験をスタートさせました。
今回の「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)実証実験プロジェクト」で、具体的にどのような挑戦をしているか、Web3 Times合同会社代表の末次氏にお話を伺いました。
■Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクトについて
―――今回「Digi-PoC TOYAMA 実証実験プロジェクト」に応募された経緯を教えてください。
末次氏:富山県の課題に、富山の寿司の魅力を全国に広めたい、そして富山の関係人口を増やしたいという課題があると伺いました。そこで、弊社のコミュニティ運営の経験・実績を活かし、誰でも気軽に参加できる「寿司といえば、富山」のブランディング戦略を考えるオンラインコミュニティを創設し、関係人口を創出しながら同時に寿司のブランディングもできたらいいのではないかと考えました。
また通常のオンラインコミュニティでは、運営者が主体となり、参加者は様々な情報を受動的に受け取って楽しむだけのことが多いのですが、富山県側が、コミュニティ参加者の意見を積極的に取り入れてブランディングの企画を実現するなど、自律分散型組織(DAO)の要素を取り入れ、自治体と関係人口の垣根を超えた「巻き込み型」のインタラクティブな新しいかたちのコミュニティがより面白いのではないかと考え、寿司といえば富山DAOの設立提案をさせて頂きました。
―――近年注目されてきている「DAO」の要素を取り入れているとのことですが、分かりやすく教えてください。
末次氏:DAOとは、自律分散型組織(Decentralized Autonomous Organization)の略であり、新しい組織の概念です。様々なバックグラウンドを持つ方達がオンラインコミュニティ上に集まり、参加者主体で、企画やイベントを推進でき、それぞれの能力を最大限に発揮できる場となります。
DAOの対比でよく使用されるのが、”従来型の会社組織”です。会社は基本、経営者(運営者)により、会社の方向性が意思決定されますが、DAOは運営者による意思決定ではなく、全メンバーが対等な立場で、投票などを通じて組織の意思決定に関わることができるのが特徴の一つです。
また、本DAOでは、コミュニティでの活動や貢献に応じて、「お寿司マイル」というコミュニティ内ポイントを貯めることができます。「お寿司マイル」を貯めると、提携寿司店で使えるお食事券や富山県の特産品など様々な特典と交換でき、コミュニティでの活動を楽しみながら、お得に特典もゲットすることが可能です。
※お寿司マイルに換金性はありません。
―――「寿司といえば富山DAO」の目的と活動を教えてください。
末次氏:「寿司といえば富山DAO」は、「寿司といえば、富山」ブランディングの取組みの輪を拡げ、関係人口を創出・拡大するために2024年10月に設立したオンラインコミュニティです。2025年2月時点で約200名の方が日本全国・海外から参加し、富山のお寿司を盛り上げる様々なイベント企画、そしてその実現をメンバーで行っております。またオンライン上の交流にとどまらず、リアルなメンバー同士の交流会(オフ会)も積極的に開催し、デジタルとリアルを融合させた新しいコミュニティ形成に挑戦しています。
―――DAO設立からこれまで、具体的にどういったことを実施されてきましたか。
末次氏:現在、富山のお寿司を盛り上げる様々なイベント・活動をDAO内で実施しておりますが、そのうち「3つ」を紹介させて頂きます。
①お寿司を楽しむ企画
DAO内では、おすすめのお寿司屋さんをメンバー同士で紹介し合ったり、おすすめのお寿司屋さんを集めたオリジナルマップを作成するなど、気軽にお寿司を楽しめる企画を多数実施しております。
また全国から約40人程が集まったオフ会を開催するなど、オンラインだけでなくオフラインでのメンバー間の交流も大切にしております。②オンライントーク会
メンバー主催で、オンライン上で様々なトーク会を開催しております。例えば、富山県名物のます寿し屋さんをお呼びしたトーク会では、ます寿司の歴史や作り方に関する知識をメンバー間で深めました。
また農林水産省官民共創プロジェクト「おいしい日本、届け隊」とのコラボ企画として、イカの黒作りで有名な富山の水産加工業者様をお呼びし、富山の水産加工品・食文化について学びました。
③ 富山きときとデジタル手形ツアー
富山県との共同企画として、2月から「富山きときとデジタル手形ツアー」を開催しました。
これは「2025年に行くべき52か所」としてニューヨークタイムズ紙に取り上げられた「富山市ガラス美術館」や富山県観光サイト「寿司の美味しさを紐解く富山旅」で紹介している寿司店などの飲食店 や酒蔵、お土産物店などの観光スポット等を巡り、2次元コードを読み取るだけで、スマートフォン上でデジタルキャラクターを獲得できる企画です。当スタンプラリーを通じて、富山の魅力を発信し、地域の新たな観光体験を創出することを目指しています。
富山きときとデジタル手形ツアーの開催提案や、デジタルキャラクターのデザインはDAOメンバーが行いました。
また富山県も2次元コードを設置する協力店をDAOに紹介するなど、富山県とDAOが協力し、共同企画として開催するに至りました。
―――実際に実証実験を進める中で苦労した点はありますか。
末次氏:苦労した点ですが、私は富山県出身・居住者ではないということで、寿司といえば富山DAOスタート当初、富山県の方及びお寿司関係者の方々と全く接点がなかったという点があります。ただ、DAO発のイベントや企画を実現するに至り、地元富山県の方々の協力は必要不可欠です。
そのため、富山県職員の方にも協力頂き、地元のキーパーソンを紹介して頂くなどし、富山の方々との接点を徐々に増やしていきました。また私自身、頻繁に富山に足を運び、直接地元の方にお会いするなどして、オンライン上のやり取りではなかなか得られない、信頼関係を構築できるよう努めました。
更に、Digi-PoC TOYAMAを富山県と共に運営されているRelicさんや北陸銀行さんにも紹介して頂くなど、とても親身になってサポートして頂き、とても感謝しております。
―――オンライン上で完結ではなく、実際に会うことも重要視されていたのですね!これまでの実証実験の成果や気づきとしてはどのような感じでしょうか。
末次氏:一番の驚きとして、富山県の方々は、積極的に新しい考えや技術を取り入れられる懐の深さを持たれている、ということです。
先ほどお伝えした、富山県とDAOの共同企画「富山きときとデジタル手形ツアー」では、「NFT」という新しいインターネット技術を活用しました。
NFTを活用したイベントを実施する自治体は日本でまだまだ少なく、新しい技術をどんどん積極的に取り入れる富山県の懐の深さを知りました。
また、DAOでの様々なイベントや企画を通じて、DAOが富山県の関係人口の創出に、微力ながらも貢献しているのではないかと考えております。
DAOがスタートした当初からDAOでの活動内容、そして富山県の情報を、DAOメンバーの方が自主的にSNS上で配信されるようになりました。その配信量は、DAO公式アカウントからの配信量の10%程にもなり、DAO公式アカウントと共に富山の魅力を知って頂く情報源になっています。
DAO以外の方は、DAOメンバーの配信をきっかけに、富山や富山の寿司に興味持ち、引いてはDAOへの新規参加につながる。
そして、新規で参加された方が、さらに富山やDAOについて情報配信するなど、よい循環が回っているのではないかと考えております。
―――実際のDAOメンバーとして活動されている方はどういった方なのでしょうか。
末次氏:2025年2月時点の、DAOメンバーの合計は約200人です。全国から参加頂いており、メンバーの方の居住地は富山県37%、その他都道府県が63%となっております。DAOでは、気軽に富山やお寿司を皆で楽しむことに、一番重点を置いており、メンバー間同士の交流が進んでいます。
また寿司といえば富山DAOメンバーの特徴の一つに、イラストレーター、エンジニアなどプロの「クリエーター」さんが多く在籍している、というのがあります。そのため、プロジェクトをDAO内で実施する際は、各方面のプロフェッショナルの方々が、それぞれのスキルや経験を活かされています。
富山県と共に企画を実現するなど、自治体と関係人口の垣根を超えた新しいかたちのコミュニティに近づいていると感じています。
―――今後の展望を教えてください。
末次氏:富山県の関係人口が集まる、「大きなプラットフォーム」にしていきたいと考えております。今は富山の寿司を盛り上げることがメインですが、今後富山の農業関係者や水産加工業者などの方にも参加頂き、富山の産業全体の盛り上がりに貢献したいと考えております。3年後は5,000人規模のコミュニティにすることが目標です。